今年の4月からランニングを始めて、もうすぐ半年が過ぎます。
最初の1~2か月はタイムもどんどん速くなり、それが楽しくて距離も延ばしていくのですが、最近は頭打ちになってきました。原因は明白。15kmあたりで必ずやってくる左膝の痛みです。必ず痛み出すことがわかってからは、痛くないときも「痛む予定」がじんわり感じられてどこか不安で、爽快感も半減しています。
一体どこがおかしいのか、なじみの整骨院で診てもらうと、私の左足はこれまでの偏った歩き方・座り方・立ち方で軸が曲がっていて、まっすぐ着地できていない、その負荷が膝まわりに集中しているのではないか、ということでした。
身体が左右不均衡なのはみんな同じですよ、と言われたものの、この左足の歪みをなんとかしないと距離もタイムも伸びないし、全体的に楽しくない。さてどうしようかと悩んでいるときに見つけたのが「ワラーチ(スペイン語表記: huaraches)」でした。
メキシコ北西部にタラウマラ族(「ララムリ」とも)という先住民族がいます。ご存知の方も多いかもしれませんが、彼らは通称「世界一足の速い部族」。これは伝説や誇張ではなく、ララムリの選手は実際に各国のフルマラソン、超長距離のウルトラマラソンに参加して好成績を残しています。
そしてワラーチは彼らが日常的に履いている、そして大会でも履いている(!)、薄いサンダルのこと。
昨今のランニングシューズはクッションの強い厚底が主流で、中級者以降向けでは反発を生むカーボンプレートを仕込んだものも珍しくありません。しかしララムリの選手たちは大会でもワラーチで走り、その走りを見たランナーの多くは「とにかく足音がしない」と驚きます。
彼らの成績や、ほぼ裸足という見た目のインパクト、そして厚底ランニングシューズへのカウンターとしてワラーチは注目を浴び、日本でもユーザーが増えてきているようです。
ちなみにこの「ワラーチ」という名前、日本語の「わらじ」ととてもよく似ていますが、もとはプレペチャ語*の“warachi”がスペイン語に派生したものだそうです。
*プレペチャ語:1530年までメキシコにあった旧タラスカ王国の言語。現在も同地(ミチョアカン州高地)に住むプレペチャ族の公用語でもある。
タラスカ王国は、日本とメキシコの国交が始まる江戸時代初期にはすでにスペインの植民地になっているため、日本(わらじ)とタラスカ王国(warachi)の交わりを見出すのは難しそうです。つまり日本人はwarachiを知らず、プレペチャ族はわらじを知らず、それぞれ同じような履き物を作って名前をつけたら、なぜか知らないけどこんなに似ていた。それはそれで不思議な親近感を覚えます。
閑話休題。ではワラーチで走ると何がよいのか。調べてみると「靴に頼らずに足が持っている本来の力を引き出すことができる」。イメージしやすいですね。これぞ私の求めていたものだ!…とまでは思いませんでしたが、足の使い方を見直すよいきっかけにはなりそうです。
実際に履いて、接地したまま地面を踏みしめてみると、思ったよりも鮮明にその凹凸が感じられます。歩いてみると、なるほど、足の裏を「使っている」感覚があります。ただ同時に身体は、幼いころの体育館の記憶(薄い上履きで高いところから着地したときの、予想をはるかに上回る衝撃)、その予感のようなものを確かに感じています。正直、不安です。
裸足のランニングは「ベアフットランニング(Barefoot running)」と呼ばれ、トレーニング手法として確立されているようで、ワラーチも方向性は同じ。初めは膝が痛くなる(もう痛い)ので、無理せずウォーキングから足を慣らしていきます。
四十歳を前にどうやって歩くかを再検討することになるとは思いませんでしたが、そういえば歩き方なんて、誰にも教わった記憶がありません。歩く、走る、座る、立つ、全部まとめてワラーチが解決してくれるといいのですが、果たしてどうなるでしょうか。
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